taking DAC technology to the next level.

Resonessence Labsのテクノロジー

優れた機械加工技術に支えられた、堅牢なA6061アルミニウム合金削り出しシャーシ

INVICTAに代表されるResonessence Labsの全ての製品は、カナダで設計・製造および組み立てが行われています。Resonessence Labsでは当初から、製品が成功するためには主要な分野で競合製品の性能を上回る必要があると認識していました。その分野の1つが製造品質です。我々の細部へのこだわりは、シャーシ設計を担当したブリティッシュコロンビア州のケロウナ市にあるIMWorks社の次のコメントに集約されています。
「本当にコストより品質を求める組織から仕事を依頼されることは非常にまれです。多くの人が品質が一番大事だといいますが、実際はほとんどそうではありません。Resonessence Labs社 は、我々の設計/製造過程に何の制約も課しませんでした。その結果、この製品にとって完璧と思えるシャーシを完成させることができたのです。」

シャーシの設計を完璧なものとするため、我々はIMWork社と何百時間も十分に検討を重ねました。素材、仕上げ、組み立て技術はすべて厳密な仕様に従っています。シャーシの組み立てに選択された方法は、電子機器ケース業界で一般的な伝統的方法ではありません。前面パネルは、構造的にシャーシ部品と一体化されたもので、見苦しいプレス加工スチールの内部シャーシを隠すためのカバーではありません。

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まず、前面パネルはコンピューター制御を用いたフライス盤による高精度な加工を施しています。さらに、何回かのコンピューター制御によるフライス加工を経て、底面プレートの酸化処理と組み立ての準備が整います。
製造図面の多くの許容誤差は 0.001 インチ内(25μm内)に保たれています。メインの前面パネルとシャーシ基盤は 厚さ6mmのA6061アルミニウム合金のかたまりから切削されます。また、内部の金属板部品と留め具はすべてステンレスから作られています。最新の高速 CNC (Computer Numeric Control:コンピューター数値制御) 工作機械や CAM (Computer Aided Machining:コンピューター支援製造) 技術が、この処理の実行を手助けしています。これらの機器の正確さと繰り返し精度により、組み立て過程でぴったりと組み合わせることのできるまったく同じサイズの部品を製造することが可能となります。

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また、前面および背面の刻印にはレーザー加工が用いられます。前面パネルの組み立て部品は非常に複雑で、27個以上の留め具が含まれています。この設計の結果、前面パネルのユーザーインターフェイスは御影石を切り出したような感触になっています。また、しっかりしたスイッチは重厚な感触を伝えます。さらに、シャーシ設計の全体的な堅牢性と重量は、ボタンやノブを操作するたびに指先で感じることができます。

製品はすべて手作業で組立てられ、ブリティッシュコロンビア州のケロウナ市にある技術施設で個別にテストされます。さらに、出荷前に100時間の連続運転を行いますので、出荷後の慣らし運転の必要もありません。

独自のアップサンプリング/オーバーサンプリング・テクノロジー

Resonessence Labsの一部の製品は、オプションでユーザーが選択可能なResonessence Labsが開発したアップサンプリングフィルターを適用することができます。最初のフィルター処理のステップは DSP エンジンで実行され、Sabre DACに176.4kHzまたは192kHzの信号を送信します。

フィルターのうち 2 つは Resonessence Labsの設計ではありません。Sabre DAC にあらかじめ組み込まれているものです。残りの 5 種類は、ユーザーからのフィードバックに基づいて独自設計したものです。独自開発のフィルターは、基本的にオーディオファンであるユーザーの聴取体験を最適化するためのもので、好みに応じて特定種類の音楽に対してフィルターをカスタマイズすることもできます。このフィルターが持つユニークな機能としては、音楽の再生時にフィルターの選択が可能な点が挙げられます。これにより、異なるフィルターを試してお持ちの音楽ライブラリー、リスニングルームに最適なお好みのフィルターを見つけることが簡単にできるようになっています。貴方は高精度なフィルターを気に入られるかも知れませんし、若干分散を持つ 「ソフト」 なフィルターの方がお好みかも知れません。

耳の肥えたオーディオファンは容易にフィルター性能の差を聞き分けることができるため、最初のフィルターが品質やオーディオの空気感に対しての鍵となりますが、アポダイジングフィルターを好まれるお客様が多いようです。4倍のサンプリングレート (176.4kHzまたは192kHzのサンプリングレートになります) に変換された後は、追加のフィルター処理は聴覚上はほとんど影響を与えません (実際に差を聞き分けることはできません)。

デジタルフィルターの詳細は「デジタルフィルターの意義とResonessence Labsが複数のデジタル・フィルターを提供する理由」をご覧ください。

32bit高精度デジタルボリューム

INVICTAには32bitのデジタル方式の音量調節機構が内蔵されています。一般的にはアナログの音量調節でのみノイズと信号を同時に減少させて信号対雑音 (S/N) 比を維持することができますので、理想的にはアナログの音量調節を使用すべきだと認識しています。しかし、Invicta の仕様をご覧いただければ分かるように、Invicta の S/N 比は標準で 132dB となっていますので、デジタル方式の音量調節はよく設計されたアナログの音量調節と同等以上の性能を有するといえます。

アナログ方式の音量調整でInvicta のデジタル音量調節を凌ぐには、出力最大電圧に対して -132dB を超えるノイズフロアーを達成しなければなりません。これは、8k オームの抵抗に発生する熱雑音と同等であるため、出力段までの全経路で -132dB のノイズフロアーを維持することは容易ではありません。

Resonessence Labsのエンジニアは、細心の注意を払えば XLR 出力回路までの全経路で -136dB レベルのアナログ方式の音量調節を作成することができ、デジタル音量調節の性能を (4dB 程度ですが) 上回ることができるという結論に達しました。ただし、クロストークの悪化、完全な出力信号電圧の不一致、THD の増加、長期信頼性の確保の問題、リモコンによるソフトウェア制御機能の欠落といった難しい点がアナログ方式の音量調整を選択する妨げとなり、高性能のデジタル方式の音量帳背を選択するに至りました。

徹底したガルバニック絶縁

どの DAC でも、グラウンドノイズの管理が高品質動作の大きな鍵となります。(すべてのメーカーが行っている) 最初の取り組みは、複数電源を使って比較的大きなノイズを持つ電源から切り離すことです。それぞれの電源は共通のグラウンドからの相対電位になるため、共通グラウンドの境界条件が設計の時点で各箇所で 0V と均一になるように細心の注意が払われます。

Resonessence Labsは、さらにこれを一歩進めた対策を施し、電源をガルバニック絶縁しています。ガルバニック絶縁では、単に電源だけでなくグラウンドも分離されるため、グラウンドドロップを引き起こす不要な電流を防止することができます。信号はこれらのガルバニック絶縁された領域をまたいで特定の絶縁されたデバイスへ伝達され、一つの回路で発生したノイズは、帰還電流がその回路内でのみとどまるため、他の回路に影響を及ぼすことはありません。この方法は、0V 参照電圧をも共有しないため、そもそもグラウンド電流を管理する必要がありません。結果として、グラウンドをうまく管理するより優れているといえます。

あらゆる角度から検証を重ねたSDカードによる音楽再生機能

デジタル形式で保存された情報は原理的に劣化がなく保存が可能なため、多くの人に好まれています。デジタル音楽の最初の試みは、データを圧縮する必要性のために中途半端なものでした。最低のサンプリングレートでも当時のデータファイルを保存するには大きすぎたためです。多数の音源をを当時のハードウェアでも取り扱えるようにするため、圧縮 (MP3) が発明されました。その後の技術進歩のおかげで、可逆性の乏しい圧縮は不要となり、その後に発展した標準的なファイルフォーマットは可逆性を持った圧縮が可能となりました。また、各種のデジタル音源をプレーヤーに伝達することも可能となりました。USB は一般的ですし、WiFi や SD カードも使用することができます。

気軽に音楽を楽しむ人たちには、デジタルデータは単なる音源の一つに過ぎません。高い精度を持つデジタルデータは、USB、SD カードのどちら経由でも同一のものとなります。デジタル録音されてしまえばデータは不変でどこでも再生が可能だと考えられるため、重要なのはデジタルのデータがスタジオで録音される際の品質ということになります。

スタジオでデジタル録音された音質の再現は、Resonessence Labsや他のハイエンドオーディオ DAC メーカーにとっての大きな課題です。最高品質のオーディオを再現するには、課題のよく知られた側面のみならずあまり知られていない側面にも対応する必要があります。たとえば、耳の肥えたオーディオファンの方から寄せられた、USBをはじめメモリーカードやCD といったデジタルデータを主体とする音源の種類により聞こえる音が変化するというコメントは、我々にとって参考になりました。

デジタル音源を保存したり伝送する媒体の種類で音が変わることは、まったく予期していないことでした。DAC のオーディオ技術でこの違いを説明することができるのでしょうか? DAC の設計でどのような点に注意すれば、このような予期せぬ問題が発生する危険を最小にすることができるのでしょうか?

最初に考慮すべき点は、オーディ機器がマスタークロックとなるべきだということです – 標準的な PC から供給される、オーディオ機器と比較するとかなり見劣りのする不正確なタイミングに依存することはできません。オーディオファンの方たちは、ジッターやクロック管理に関わる問題についてよくご存じです。WiFiのようなデータ通信が典型的な電波環境で非常に不安定でドロップアウトしやすい通信方法は大きな課題となります。

最下層レベルでの低ジッターや高精度タイミングを実現するには、オーディオクロックが PLLでも実現不可能な精度を持つ 「マスタークロック」 である必要があります。[PLL はオーディオクロックをロックすることが出来ますが、水晶振動子が実現する極高の 「Q」 値には及びません。] したがって、最高品質のオーディオ再生のためには低位相雑音発振器がオーディオ再生環境 (すなわち DAC システム内の管理されたノイズ環境) のマスタークロックとして使用するということになります。次にバッファリングとフロー制御用のデバイスがこのオーディオサブシステムを用いて、入出力データをオーディオサブシステムが必要とする精度で確実にクロックされるようにします。

原理的には、この手法 (マスタークロック、デジタルインターフェイスレシーバー/トランスポーターへの高度なフロー制御) が必要とされるすべてで、設計は完了ということになりますが、我々の経験からこれだけでは不十分だということが分かりました。オーディオファンの方は、USB や SD カードのデータ源による違いも聞き分けることができるのです。同じデジタルデータなのにどうしてこのようなことが起こるのでしょうか? USB 接続経由でも SD カードからの読み込みでも、ビット単位の精度で同じデータがどうして違って聞こえるのでしょうか?

これには、エンジニアや科学者が 2 次あるいは 「高次」 効果と呼ぶ原因が考えられます。このような効果の一つについて触れ、Invicta ではどのようにしてこのような効果を回避しているかを説明することにします。

USB オーディオの例を考えてみましょう。信頼に足るシステムではフロー制御に関わる問題の解決のため、マスタークロックを (非同期 USB およびUSB Audio 標準等で) DAC に入力し、USB ホストの負荷を軽減するために、不測のデータ遅延にも対応可能な大容量バッファーメモリーを信号経路中で一般的に使用しています。高精度のクロックと位相ノイズを最小化するための DAC 部分へのデータフローというプロセスと、バッファーメモリーのステータスを監視し、長期間の同期を維持するために USB ホストにフィードバックするための管理用非同期プロセスという 2 つ (あるいはそれ以上) のプロセスが DAC で動作していますが、驚いたことにこれらがデータ源による音の違いを説明することのできる 2 次効果問題の原因となっていることが分かったのです。

フロー制御の非同期プロセスは、オーディオ帯域内で実行されます。フロー制御のプロセスは、ミリ秒単位で実行、停止されるため、データはオーディオ周波数帯域でバースト転送されることになります。さらに悪いことには、USB のドライバー自体も低インピーダンスのバッファーで、USBバス電源の雑音はオーディオ帯域に非常に大きな周波数成分を持ち影響を与えます。バッファーメモリーへのデータの出し入れも電流を消費しますが、大容量になるほど電流量も増大し、これもまたオーディオ帯域の成分を持ちます。これらすべては電源の負荷増大を意味し、USB フロー制御に比例した (設計が正しく行われている場合には) 微小な電源の変動を引き起こします。この変動は主にクロックの位相変調を通じてオーディオのストリームに混入しダイナミックレンジ も THD も悪化させませんので仕様には現れませんが、間違いなく聴覚上の差異を発生します。

すべてのハイエンドメーカーは、大容量電源の方が望ましいという指針を持っていますが、これはまさにこのような効果を軽減するためのものです。優れた DAC の設計は、この効果を最小化するために USB インターフェイス用にまったく別の電源を持つものですが、複数電源の使用にはさらにガルバニック絶縁という次のステップがあります。複数電源の使用だけではグラウンドの接続は絶縁されませんが、ガルバニック絶縁は真に電源を分離するものです。Invicata で使用されているガルバニック絶縁は、電源と同様にグラウンドも完全に絶縁します。ガルバニック絶縁を使用すると、USB フロー制御の欠陥によるオーディオシステムのグラウンドの乱れはなく、電源変動による位相ノイズも最小限に抑えられます。[ガルバニック絶縁された回路を結合する他の効果も存在するため、位相ノイズは 0 とはなりませんが、可能な限り低く抑えられます。]

USB と SD カードに対する 2 次効果の存在による絶対的な最高性能達成の困難さを比べてみましょう。USB インターフェイスでは、フロー制御は USB ホストに影響され、オーディオ DAC 内のフロー制御プロセスの細かな動作により性能が変化します。つまり、USB がシリアルのデータで、データを USB の 「パイプ」 にシリアル転送する必要がある点が基本的な問題となります。これに対して、SD カードでは USB よりはるかに高速 (数ナノ秒) かつコントローラーの要求通りの順序でデータにランダムアクセスが可能です。この場合、データアクセス処理の周波数領域特性は制御可能で、アクセスが 「均一」 に実行されてオーディオ帯域に周波数特性を持たないようにすることができます。さらに重要なことは、SD カードはケーブルによる容量を持ちません。USB にはUSBケーブルによる容量が存在するため、駆動回路にかなりの負荷を与えます。また、SD カード使用時の 「平均化」 処理を追加する以前に、そもそもバス電源に起因する雑音は USB にくらべて低く抑えられています。

これらはあくまでも 2 次的効果で、低価格のコンシューマー用製品ではそもそも気にもかけられないレベルの問題であることをご理解ください。

最後に、これ以外の 2 次的効果があります。注意しないとオーディオ帯域に現れるような電流消費を引き起こす同じような欠陥がディスプレイにもあると思い当たられたのではないでしょうか。Invicta はこれらの点すべてを考慮して設計されています。

追記

リリース 3 以前のファームウェアでは、ベータテスターの方たちから USB よりも SD カードを音源とした方が 「音が良い」 という報告をいただき、原因が設計にあるのではないかと調査をしました。音質に差があるとは考えにくく、設計の見地からも差が出るはずはなさそうだったのですが、過去の経験からベータテスターの方たちの意見は信頼すべきだということも分かっていました。

リリース 3 以降は USB と SD カードによる音質差に関する報告はありません。実際のところ実装で可能な限り最小化しているという2次的効果しか思いあたる点はありませんでした。USB のバッファリングが不完全な再生の原因である可能性がありましたが、Invicta が USB バスのホストではなくクライアントであるためなす術がありませんでした。

ところが、リリース 3 のファームウェアで SD カードと USB の差が識別不可能となりました。リリース 3 で何を行ったら幸運にもこのような結果になったかをご存じになりたいと思われるかも知れません。

リリース 3.0.0 以降では、まずユーザーインターフェイスの 「ポーリング」 を削除して、インターラプトドリブンのユーザー入力に置き換えています。このため、DSP が USB の処理パス設定後にユーザーの操作をチェックし続ける必要がなくなり、実際にユーザーインターフェイスのイベントが発生したときにのみ対応するようになっています。

音質の違いを与えていた可能性があるものとして、USB データパスの冗長なタイミングチェックをソフトウェアチームが発見して削除しました。このタイミングチェックは、内部低ノイズクロックへの正確なロックを保証するためのものでしたが、データはすでにその低ノイズクロックを利用している事が判明したので、不要ということで削除されました。

最後に、FLAC のデコード機能がシステムに追加されました。リアルタイムで 192kHz の 同時 処理を実現することはかなりの難題でしたが、プロセッサーのオプコードレベルの最適化によって出荷されたすべての INVICTA で対応することが可能となりました。これは、コンパイラーによる一連のオプコード最適化に依存するのではなく、オプコードを実際に解析して、明確な改善が 可能な箇所に対して手操作で最適化を実施するというものです。さらにオプコードの使用効率を向上させるために、プロセッサーへのハードウェアユニット追加 も行いました。(これは、INVICTA と CONCERO が Xilinx の MicroBlaze というFPGAを使用しているために可能となりました。) この結果、一般的なオーディオ処理をより少ないクロックサイクルで実行することのできる、非常に効率的なプロセッサーのアーキテクチャーを実現しています。

これらの変更によって、USB と SD カードでまったく同等の高品質オーディオ再生となったとの報告を受けています。ただし、上記の通り、どこに問題があったのか (そもそも問題があったのかどうか) 、どうしてリリース 3 で改善されたのかについて正確な説明ははっきりしないままです。

Resonessence LabsがAD797を採用している理由

この話題は、我々が予期していなかった質問やコメントを引き起こしました。現実的な回答としては、Invicta の設計は何度も変更を繰り返し、AD797 を使用した設計が試聴テストと測定の両方でベストな結果となったということになります。もちろん一番廉価なソリューションではありませんが、我々が判断できる範囲において最高の性能を発揮します。ここで議論を終了すべきだったのかも知れませんが、AD797 がどうして良い結果をもたらしたかに関しての考察をわれわれのエンジニアが行い、その内容を評論家の方たちと共有しましたので、記録のためにここに記載させていただきます。この話題は、電子設計、特にオーディオ設計の多くの興味深い側面に関連しているため、時間が許せばもっと多くについて、一つの 項目に収まりきらないくらい深く多くの内容を書くことはできるのですが、とりあえず手始めとして。

ここでの議論は、フィードバックや FET 対バイポーラ入力といった問題に集中します。

最適からはほど遠い設計に対する包括的なソリューションとしての帰還という考えは非常に誘惑的です。負帰還を使用すると、線形性を気にする必要がなく、高利得という美点のみを持つ回路は非常によく見えます。負帰還は、一定のバンド幅で特定の閉ループ利得以下の領域で開ループ回路設計の欠点を抑えることのできる強力な技法です。帰還の使用によって回路の線形性は、自動的に負帰還が補正してくれるため、気にする必要がなくなります。

しかしながら、オーディオのエンジニアと知識の深いオーディオファンはその程度では納得しません。すばらしい器官である耳は、閉ループ構成で適切な性能を達成していると考えられる回路でも、よりよい設計の帰還量が少ない開ループ回路にかなわないことを聞き分けることができます。このため、「負帰還はいわれるほど魔法のような効力はないので、常に負帰還量を最小にしてできるだけ開ループ回路に近く使う」 ということが一部のオーディオ設計者の経験則となっています。この経験則は、エンジニアに対して開ループ線形性への注意を促すという点で良いことだといえるでしょう。

線形な開ループ回路に取り組もうと考えた瞬間、色々なことが違って見えるようになりました。低ノイズ、高伝達特性、良好な電流利得を持つバイポーラ素子は、多くの設計のよりどころとなっていますが、開ループ構成ではひどく非線形となってしまいます。コレクター電流の関数としての伝達特性の変化は早く、対数関数的な特性は大信号の応答をひどく非線形なものとしてしまいます。さらに、有限 (かつあまり低くない) ベース電流は、気をつけないと電圧ノイズを越えるノイズ源となってしまいます。

オペアンプ以前の折りたたみカスコード、平衡型カレントミラー、ベース電流補償技術等を利用した高利得構成が実現されていない時代にディスクリート設計が発展したということは興味深いことです。素子同士の特性は一致せず、しかも多くの素子が必要とされたので、ディスクリートでは負帰還を多用した高利得の設計は一般的ではありませんでした。性能には最初から開ループ設計に近いような線形性が求められ、まさにこの理由によって、線形の開ループ設計を探求するとディスクリート設計の良さを理解するようになるということは真実をほぼ言い当てているといえるでしょう。

開ループの線形性を向上させるための周知の手段は、入力段での FET の使用です。FET は、ドレイン電流に対する伝達特性という点ではあまり良い素子ではありませんし、同じ伝達特性に対しても高めの電圧ノイズを持ちますが、2乗則に近い関係がバイポーラー素子と比較して大信号の線形性を増大しています。差動信号電流が飽和するには入力対に非常に大きな電圧が必要となるため、スルーレートが高い場合の線形性も良好です。さらに、FET のゲート電流はほとんど 0 ですので、ゲート電流ノイズを無視することができます。負帰還に頼らずに設計の線形化を図るには、FET の方が良い選択となります。このため、2 番目の経験則は 「オーディオ設計では FET 入力が一番」 ということになります。

われわれの思考プロセスでこの時点では、必要なのは FET ベースのディスクリート設計だという結論にほとんど達しかけていました。では、どうしてバイポーラ入力設計の Analog Device AD797 を使うことにしたのでしょうか?

AD797のデータシートの図で Q1、Q2 は明らかにバイポーラー素子です。

Invicata のプロトタイプ作成時に AD797 の試聴、測定結果がベストだったために採用を決めました。そうでなければ採用する理由はありませんでした。

このため、このあとで述べられていることはすべて、どうして AD797 の音が一番良かったのかを理解し、将来の製品を設計する際に指針となるエレクトロニクス技術に関する何らかの理解を得ることによって自分たちが納得できるようにする 「事後の」 試みということになります。

このオペアンプでは負帰還が肝となっているようです。その理由は、データシートで説明されているように、対称型のオペアンプで、高利得のためのブートストラップや開ループの線形性改善 (ADI はこれを 「出力段により発生する歪みの相殺」 と呼んでいます) をするためのスマートな手法を使用しているからです。対称構造、ブートストラップ、素子マッチングの使用によって、一段のみですべての利得を達成するという数学的な理想に近づいています (ADI は、「このマッチングにより DC 精度が向上するだけではなく、ダイナミック性能も向上するため、歪みとセトリングタイムも小さくなります」 と記載しています)。これらをまとめると、このオペアンプは高線形性を持つ開ループの設計ということになり、われわれがディスクリートの設計で達成しようとしていたことと同じですが、それに加えてマッチングのとれた相似的なオンチップのバイポーラ素子を持つという利点があります。

負帰還を使おうと決めた場合にはこのオペアンプがその用途に最適かも知れませんが、マッチングと対称型の歪みの相殺では Q1、Q2 からベース電流ノイズを減らすことはできませんので、その側面からは FET より劣っているはずです。それなのに、どうして ADI は超低ノイズと謳い、Resonessence はこのオペアンプで -130dB のノイズを達成しているのでしょうか?

どのようにしたらこのようなことが可能になるかはもう少し詳しく調べる必要がありますが、データシートを詳しく読むとヒントが見つかります。入力がデータシートの図に示されているとおり左側にあり、バイポーラ素子が非常に大きな、たとえば 500 の電流利得 を持つとします。すると、I1 は最大でも 250uA 程度となります。[電流は公称では入力素子あたり 125uA の 2 つに分岐されます。500 の電流利得 (ベータ) で、データシートに指定されている入力電流にほぼ等しい 250nA の入力電流となります。] ところが、この解析は 12 ページにある 「… 1 mA に近いコレクター電流で動作している特別な入力トランジスター」 という記述と矛盾しています。明らかに、「1mA に近い」 コレクター電流に 250nA のベース電流が引き上げられている、つまり 4,000 という電流利得 を持つことになります。これは普通のバイポーラ素子では考えられない数値で、事実、接合型 FET (JFET) 素子に近いものですが、それでもまだ 0.9nV/√Hz の電圧ノイズを持ち、最大 1k オームまでの複合インピーダンス (ノイズ源インピーダンス) に対して電流ノイズは無視することができます。Analog Devices は、(少なくとも低インピーダンスのソースに対しては) バイポーラ素子の極小ノイズ特性と FET の極小入力電流 (したがって微小入力電流ノイズ) を併せ持つ理想的な入力素子を開発したようです。

先に述べたとおり、これらはすべて 「事後の」 理由付けです。重要な点は、テスト結果がこのアンプの性能を裏付けているということです。卓越した設計で組み上げられた素子が良好な性能を示したと結論づけることができます。Invicta 用として非常に良好な性能を発揮できるように、開ループ利得は十分に線形で入力電流は十分に低くなっています。電流ノイズに関しては FET のような挙動を示しますが、増幅部はバイポーラのような低電圧ノイズの恩恵を受けます。さらに、優れた設計によって、バイポーラ入力アンプにありがちな開ループの非線形性に悩まされることもありません。

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先進のUSBインターフェイス

Invicta の USB インターフェイスは Mac OS と Windows のネイティブなドライバーをサポートしており、特別なドライバーをインストールする必要はありません。ユーザーが簡単に使えるよう Invicta の USB ソフトウェアは自動的にホスト種類を決定するようになっており、Mac OS が検出されるとアシンクロナス USB Audio 2.0 モードに、Windows が検出されるとアシンクロナス USB Audio 1.0 に切り替わります。

ところが、2011 終わりと 2012 始めにカスタマーから寄せられたフィードバックによると、OS 種類の検出による USB Audio 1.0 と 2.0 の自動切り替えがあまり役に立っていないことが判明しました。

多くのユーザーは、お使いの Windows にサードパーティー製の USB Audio 2.0 ドライバーをインストール済みであることが分かったため、リリース 2.0.1 以降のソフトウィーではマニュアルで自動選択を手動で変更できるようにし、さらに無償で Invicta 用にカスタマイズされた Windows 用の Thesycon USB Audio 2.0 ドライバーを提供するようにしました。このドライバーは、ご購入いただいた INVICTA システムに付属する SD カードに収録されています。

Invicta は、オーディオデバイスとヒューマンインターフェイスデバイス(HID) の 2 種類の基本的に異なるモードで動作することができます。また、この 2 つのモードを一緒に使用して、オーディオ出力と、一時停止/前曲/次曲等の PC への操作を実行することが可能です。

(Windows 用の USB Audio 2.0 ドライバーは前述のようにサードパーティー製品ですが) USB インターフェイスのソフトウェアは独自開発で、他社の USB インターフェイスコードを購入したりオープン音源コードを使用したりしていません。社内の USB ソフトウェア専門知識だけで十分に独自開発が可能で、さらに (上述の Mac/PC 判別のような) 独自機能の提供が可能となります。ただし、USB の非同期オーディオ部分だけは別で、実装は簡単な仕事ではありません。USB (や同様の理由で MPEG 等) は業界標準仕様で、公開されているためにどんな会社でも利用が可能だと考えられがちです。

実際は、USB の仕様は何ができて何ができないと非常に細かく策定されていますが、特定の高レベル機能をどのように実現するかに関しては何も触れられていません。これは、個々の家や家の特徴については書かれているが、どの順序でどの家を訪問したら良いかやある家から次の家の相対位置については説明がない近所の地図に似ているといえます。もちろん、最短で近所を巡る方法や郵便の配達順序についても触れられていないため、FedEx と UPS ではお互いに最善と思いながらまったく別の経路を取っていたりすることがあります。仕様だけではその経路が最善ではないとは判断することはできません。

仕様はこのように記述されていますので、複数の実装を可能とし、特定の会社のソリューションを偶発的に優遇することもありません。さらに、これらの会社も人間により運営されているため、エンジニアが特定の設定でのみ設計の動作を検証して、他社の実装とわずかな不整合があることをあとで発見することも希ではありません。

Resonessence Labsでは、各種ソフトウェアを使用して Mac と PC でオーディオを出力することによって実装をテストし、コードが所定の動作を行い許容範囲内の動作余裕を持つことを検証しています。たとえば、USB ソフトウェアは出力に何も影響を及ぼさずにホストの PC で Invicta の高精度クロックに対して無兆候かつ不定の ±1000ppm のタイミング誤差を許容することができます。

ソフトウェアは複雑なもので完璧だと証明することはできませんので、Invicta の USB インターフェイスが完璧だと主張するつもりはありません。このためにソフトウェアのアップデートを提供して、必要性が生じた場合にアップデートをお届けするようにしています。問題を見つけたり問題が疑われる場合には遠慮なくご連絡ください。このようなやりとりでカスタマーから学ぶことや、サポートをすることが可能となります。

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